エバポレーション
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ロータリーエバポレーターの50年
2007年は、スイスのビュッヒ社(BUCHI Labortechnil AG)がロータリーエバポレーターを開発してから50周年にあたります。この50年はまた、ロータリーエバポレーターの成功の歴史でもあります。蒸留・蒸発は、今もなお最もよく使われる分離・濃縮法です。今の時代にロータリーエバポレーターのない実験室など想像できないでしょう。蒸発・分離という手法のはじまりを知るには、人類の歴史を3500年ほどさかのぼった中近東に目をやらねばなりません。その頃ペルシアで、バラ水(ローズウォーター)を作るために「ドロップ・バイ・ドロップ(1滴1滴)分離法」が発見されました。これは最も単純な蒸留装置で、基本は粘土鉢です。鉢に液体を入れ、蓋をして熱すると、蓋の内側表面に蒸気が凝結して精製された水滴になります。時々この水滴を羽根でぬぐって集め、また蒸留を続けるのです。この方法はほどなくペルシアからヨーロッパ全域へ、そして北アフリカやアジアへと伝わりました。
次に、今から2500年以上前に、ギリシア人の船乗りたちが外海の船上で羊毛を使った凝結法を編み出しました。船が遭難し、海水から飲料用の真水を作る必要に迫られたのです。彼らは海水を熱し、鍋の上に羊毛を乗せてそこで蒸気を凝結させました。この「羊毛凝結装置」は古代から近代まで広く用いられ、それまでの「粘土鉢タイプ」に比べると大きな進歩でした。
海水が蒸発後に凝結すると真水になることがわかったのは、偶然だったかもしれませんし、霧が帆について結露し、雫となって甲板に落ちたのに着目したのかもしれません。当時はまだ、液体と蒸気の関係を解明するための科学的実験は行われていませんでした。紀元前350年頃にようやくアリストテレスが蒸留液と蒸発と凝結の基本原理を研究し、自然界の水の循環を説明します。やがて2世紀に入ると、エジプトで、錬金術の教義に応じて蒸留装置が発達しました。その装置は加熱槽、試料フラスコ、ヘルメット型カバー、受けフラスコという4つの基本部分で出来ていました。蒸気出口の上にかぶせるヘルメット型カバーには、内側に凝結水を集める導水溝が付けられています。蒸気はカバーの内壁で凝結し、下の縁の溝に流れ落ち、出口を通って受けフラスコに集められます。「アランビク」(ランビキともいう)と呼ばれるこの装置は通常、銅で作られましたが、陶製やガラス製のものもありました。今のロータリーエバポレーターで使われている原理も、この装置の原理を近代的に改良したものです。

- Air-and water - cooled distillation before the 17th century
17‐18世紀には、装置の蒸留能力の改善が着々と進みました。この時初めて、冷却剤として水が使われはじめました。装置の素材も、金属から、より薬剤耐性のあるガラスに変更されました。17世紀には、真空の研究に取り組んでいたアイルランドの物理学者ロバート・ボイル(Robert Boyle)が、圧力と沸点の関係を解明するために初めて真空蒸留を行いました。圧力調整器の発明とポンプの改良により、目的に応じた真空蒸留の利用が可能になり、より効率的な蒸留が実現されました。当初、真空蒸留用に使われたのはアランビクタイプの蒸留装置だけでした。19世紀中頃になって有機化学という学問分野が登場すると、まさに爆発的といえる技術革新が起こり、初の精留カラムと多段蒸留法が開発されます。
フラスコを回転させてサンプル溶液の混合状態を良くし、加熱効果を高めて、生成物を有効に回収できる処理工程を実現しようというアイディアは、科学者のC.C.DraigとM.E.Volkによって1950年と55年にそれぞれ発表されました。彼らはまた、蒸気を効率的に凝結させる冷却器も提案しました。
このC.C.DraigとM.E.Volkのアイディアに着目したのが、ヴァルター・ビュッヒ(Walter BUCHI)です。彼は利益共同体団体「バーゼル化学産業」の協力を得て、最初のロータリーエバポレーターの開発と商品化に成功しました。特許を取得した第1号装置は1957年にバーゼルで発売され、翌1958年にフランクフルトの国際化学見本市ACHEMAで国際デビューを飾ります。その時の反響のすごかったこと!
RotavaporⓇ 1957年モデルは、火花の出ないインダクションモーターと、冷却コイルつきの高性能ガラス製冷却器を備えていました。また、シンプルなプリセット式ポテンショメーターを使って、回転速度を0‐240rpmの間で安定して調節することを初めて可能にしました。冷却器は、標準ジョイントで駆動ユニットに取り付けられています。この1957年の第1号モデルの時点ですでに、サンプル供給チューブとコック栓によって蒸留中にサンプル溶液を連続供給する機構が備わっていました。真空源としてはウォータージェットポンプが使われ、回転するフラスコの底部がひたるウォーターバス(加熱槽)が採用されています。RotavaporⓇ 1957年モデルは以後20年以上にわたって数えきれないほど多くのラボで愛用されました。1961年のACHEMAには早くも、明らかにビュッヒのモデルをコピーしたロータリーエバポレーターが複数の他メーカーより出品されましたが、ビュッヒ製品に太刀打ちできるものはひとつもありませんでした。ビュッヒのRotavaporⓇ の成功と進化の結晶についての詳細は、ロータリーエバポレーターのページをお読みください。






